時計と摩擦

前回、摩擦が敵と書きましたが、なぜ敵なのか?まずそちらをお話します。
時計の機械は、直径約2.5 c mの世界にすべてがおさめられています。その中で、力を蓄え、伝達し、時間を数え、表示する。
これらの機能を24時間休むことなく正確に働かせるためには、少しでもロスを抑える。無駄を省くことが大切になってきます。
機械式時計の場合、ゼンマイが擦れる、歯車と歯車が擦れる、歯車の軸が擦れるなど力を伝えていく過程では、こすれ合うところだらけです。 このとき、摩擦が大きければ大きいほど、時計を動かすための力が失われていきます。結果どうなるか?時計の精度に大きな悪影響を及ぼします。
振り子時計の振り子を思い浮かべてください。あの振り子が弱々しく、少ししか振られないような状態です。 では、摩擦を気にするよりも、もっともっと強いゼンマイを入れて、力を強くすれば振り子は大きく、力強く振るのでは?
まさにその通りです。実際に、ゼンマイを強いものに交換する技術者もいます。でも果たしてそれで良いのか?摩擦はこれで無視できるのか? 確かに、力強く動きます。と言うことは、それだけ強い力が歯車と歯車、軸などにかかってくるということです。 その結果、歯車や軸は通常よりも早く磨り減ってしまいます。たとえ時間がよく合うといっても、これでは修理とはいえません。
結局、ゼンマイの力が弱くとも、力を無駄なく伝えること、つまり摩擦を極力減らすことが大切になってくるのです。