キズ見に頼りすぎは注意!?

前回の最後に、安易に高倍率のものを使わないようにと書いた。
その理由。
はっきりしていることは、の要がないと言うこと。
国内、国外問わず、多くの優れた技術者の方にお会いしてきた。 国内でも、トップと呼ばれる方々。どんな複雑時計でも修理ができる人。
このような人たちは、通常は高倍率のものを使用していないという事実がある。
その事実から、まず理解してほしい。
その人たちの目が特殊なわけではない。
ただ単に、真似をしろというわけではない。
これらの優れた人々が、高倍率のものを通常使用しないにはちゃんと理由がある。
一つは、「目がついてこれなくなる」
例えば、通常4倍のキズ見を使う。
細部の確認や、調整に10倍のものを使う。
ところが、通常10倍を使っている人は、確認には2 0倍が心要となる。
視野は狭くなり、心要以上に時計を顔に近づけなければいけない。 倍率が高ければ高いほど、目には負担になる。 5年10年で辞めるつもりならばいいが、もし一生の職業と考えているならばちゃんと考えた方がいい。
通常作業分解、組み立て、注油、調整などすべて4倍程度のもので十分。
十分というより、その方が楽。
注油の確認や調整の確認など「確認」をするときに10倍程度のものを使用する。
もう一つ大切な理由。
「危ない」
特に工作機器を使うとき。 ウォッチメーカーの仕事の一つである部品製作。 このような作業の際に、高倍率のキズ見を使用すると特に危険。
作業中に金属片や粉が飛んでくるのはよくあること、、、
高倍率のものを使用すると、より近づかなければならない。
より危険になる。絶対に避けたい。
0.07mm程度の物を作るぐらいであれば4倍で十分。
作っているものの「確認」に10倍を使用する。
キズ見に頼りすぎることは、自分の身を危険にさらすと同時に、技術力をもだめにしていくことになる。